なぜ、VURA Working Paper Seriesをつくったのか 実践を理論へ、理論を知へ、知を実践
- Naoki Kadowaki

- 6 日前
- 読了時間: 25分


なぜ、VURA Working Paper Seriesをつくったのか
実践を理論へ、理論を知へ、知を実践へ
2026年、VURA Capital Innovation Holdingsは「VURA Working Paper Series」を立ち上げました。
VURA Working Paper Seriesは、AI時代の企業経営、企業価値、組織、人、資本、社会に関する問いを研究し、その成果をWorking Paperとして公開していくためのシリーズです。
しかし、私たちがWorking Paperを発行している理由は、単に「研究活動を行うため」ではありません。
VURAは大学でも、シンクタンクでもありません。
私たちの中核にあるのは、企業への投資、経営参画、そしてEnterprise Redefinition(企業再定義)の実践です。
では、なぜ、そのような会社が研究を行い、書籍を出版し、Working Paperを書き、さらに知識体系までつくろうとしているのか。
その背景には、VURAが大切にしている一つの考え方があります。
実践を理論へ。理論を知へ。知を実践へ。
この循環をつくることです。
1.すべては「実践」から始まった
私のキャリアの大部分は、研究室ではなく、企業経営の現場にありました。
事業会社、コンサルティング、経営、企業変革、新規事業、テクノロジー、組織、そして投資。
長い間、さまざまな企業や経営者と向き合うなかで、一つの疑問を持つようになりました。
なぜ、優れた企業であっても、未来をつくり続けることは難しいのか。
優秀な人材がいる。
技術もある。
資本もある。
ブランドもある。
過去には大きな成功も収めている。
それでも、環境が大きく変わると、それまでの成功の方程式が機能しなくなる企業があります。
逆に、何度も自らを変えながら、新しい価値を生み続ける企業もあります。
この違いは何なのか。
戦略でしょうか。
DXでしょうか。
イノベーションでしょうか。
組織改革でしょうか。
M&Aでしょうか。
もちろん、それらはすべて重要です。
しかし、多くの企業の変革に関わるなかで、私は次第に、そのさらに上位にある問いを考えるようになりました。
「そもそも、この企業は何をする企業なのか。」
そして、
「この企業は、未来に向けて何を生み出す存在なのか。」
という問いです。
既存事業を改善するだけではない。
既存の戦略を修正するだけでもない。
企業そのものの存在意義、事業、組織、資本、リーダーシップを、未来から捉え直す。
私は、この行為をやがて、
Enterprise Redefinition——企業再定義
と呼ぶようになりました。
最初に理論があったわけではありません。
実践のなかで感じてきた違和感や問いが先にありました。
VURAの研究の出発点は、ここにあります。
2.実践を「経験」のままで終わらせない
経営には、膨大な暗黙知があります。
優れた経営者や実務家は、多くのことを経験から理解しています。
「この事業は伸びる」
「この組織では変革が起きない」
「この企業には次の成長余地がある」
「この会社はいま、自らを変えなければならない」
こうした判断には、数字だけでは表現できない経験知が含まれています。
しかし、ここには一つの問題があります。
経験は、そのままでは個人の中に閉じてしまう。
経験した本人には分かる。
しかし、他の人には十分に伝わらない。
再現することも難しい。
次の世代に残すことも難しい。
だから私は、自分が実践のなかで考えてきたことを、言葉にすることから始めました。
その一つの形が「書籍」です。
Future Value Theory。
Enterprise Redefinition。
AI時代の経営100の問い。
そして、AI Management Library。
企業価値とは何か。
企業は何のために存在するのか。
AIによって知識、分析、実行が民主化されたとき、人間には何が残るのか。
人は何のために働くのか。
企業は何を競争優位とすべきなのか。
資本は何に配分されるべきなのか。
こうした問いについて、実践から得た思考を、一つひとつ文章にしてきました。
これは私にとって、「本を書く」というよりも、
実践の中にあった暗黙知を、言語化する作業
でした。
3.しかし、書籍にしただけでは「理論」にはならない
ここで、もう一つの問いが生まれました。
自分自身の経験をもとに考え、本として体系化した。
しかし、
それは本当に新しい考え方なのか。
という問いです。
自分では新しいと思っていても、すでに世界のどこかで研究されているかもしれません。
経営学、経済学、組織論、ファイナンス、イノベーション研究、戦略論、人的資本論などには、膨大な研究の蓄積があります。
自分自身の実践経験だけを見て、
「これは新しい理論だ」
と言うことはできません。
だからこそ必要だったのが、
Working Paper
でした。
書籍で言語化した考え方を、今度は学術研究の世界に置いてみる。
既存研究を調べる。
先行研究と比較する。
何がすでに明らかになっているのか。
どこまで説明されているのか。
既存理論では何が説明できないのか。
自分が実践から導き出した考え方は、そのなかのどこに位置するのか。
その作業を通じて初めて、
「経験から生まれた考え」を「検討可能な理論」へ変えていく
ことができます。
VURA Working Paper Seriesをつくった大きな理由の一つは、ここにあります。
4.Working Paperは「正しさを宣言する場所」ではない
Working Paperを書くというと、「自分たちの理論が正しいことを証明するため」と思われるかもしれません。
私は、むしろ逆だと考えています。
Working Paperは、
自分たちの考えを、外の世界にさらすための場所
です。
既存研究と比較する。
反証可能な形にする。
仮説を置く。
事例を分析する。
理論の境界条件を考える。
測定方法を考える。
別の観点から問い直す。
そこでは、自分たちにとって都合の良い説明だけを選ぶことはできません。
「この考えは本当に成立するのか」
「別の説明はできないのか」
「どの条件では成立しないのか」
「どうすれば測定できるのか」
「他の研究者が検証できる形になっているのか」
という問いに向き合う必要があります。
つまりWorking Paperを書くことは、
理論を完成させることではなく、理論を鍛えること
なのです。
5.一つの理論を、さまざまな角度から見る
VURA Working Paper Seriesでは、一つのテーマだけを研究しているわけではありません。
企業価値。
企業再定義。
組織と人。
Brain Capital。
社会。
資本主義。
一見すると異なるテーマに見えます。
しかし、私の中では、すべて一つの問いにつながっています。
AI時代に、人と企業は、どのように未来価値を創造するのか。
たとえばFuture Value Theoryでは、企業価値を、現在の利益だけではなく、
まだ存在していない価値を未来に生み出す能力
から捉え直します。
Enterprise Redefinitionでは、企業がその未来価値を生み続けるためには、自らのPurpose、Business、Organization、Capital、Leadershipそのものを継続的に再定義する必要があると考えます。
さらにEnterprise Redefinition Observedでは、その考え方を企業の実例に当てはめます。
複数の企業を観察し、企業がどのように自らを再定義してきたのかを見る。
すると、理論だけを考えていたときには見えなかったことが見えてきます。
重要なのは「変化の回数」だけではない。
Business、Capital、Organization、Purpose、Leadershipの間に整合性があるのか。
再定義に成功した企業と、再定義の機会を失った企業では何が違うのか。
理論を事例に当てることで、理論そのものがさらに磨かれていきます。
6.企業だけではなく、「人」を再定義する
企業を再定義していくと、必然的に「人」の問題に行き着きます。
AIが仕事の一部を担うようになったとき、人間の役割とは何でしょうか。
これまで企業は、人の役割をJob Descriptionによって定義してきました。
「何をする人なのか」を職務によって定義する。
しかしAIによってタスクそのものが絶えず変化する時代に、固定されたJob Descriptionだけで人の役割を定義し続けることはできるのでしょうか。
そこから生まれたのが、
Purpose Description
という考え方です。
何をする人なのかではなく、
「何のために存在するのか」
を定義する。
誰のために価値を生み出すのか。
どのような未来を実現するのか。
AIと人間の役割分担が変化しても、その上位にあるPurposeは人間が持ち続ける。
企業再定義を考えていたはずが、やがて人間の役割そのものを再定義する問いへと広がっていきました。
7.さらに「Brain Capital」へ
人とAIの関係を考えると、次に浮かんでくるのが、
企業の知的能力とは何なのか
という問いです。
AIを導入すれば、生産性は上がります。
調査も速くなる。
資料も速くつくれる。
分析も速くなる。
しかし、
AIを使うことで企業そのものが賢くなっているのか。
これは別の問題です。
AIによるアウトプットの増加と、企業内部に蓄積される人間の能力は同じではありません。
そこからBrain Capital Managementという研究テーマが生まれました。
企業が未来を構想し、判断し、自らを再定義するために動員できる認知能力。
それを一つの「資本」として捉えられないか。
人的資本とも、知的資本とも、AIの計算能力とも異なる、新しい企業能力として考えられないか。
こうして、一つの実践的な問いから、新しい研究テーマが派生していきます。
8.企業から社会へ
さらに問いを進めると、企業だけでは終わりません。
AIによって知識そのものが民主化されていくと、社会における「人の価値」の決まり方も変わっていく可能性があります。
どの会社に所属しているか。
どの大学を卒業したか。
どの肩書を持っているか。
どの職業についているか。
これまで社会は、こうした外部の記号によって人を評価してきました。
しかし、AIによって知識へのアクセスが急速に平準化されるならば、人の価値はもっと、
「自分は何者なのか」「何を実現したいのか」「どのような価値を生み出すのか」
によって定義されるようになるかもしれません。
そこから生まれたのが、
Self-Defined Society
という研究です。
企業のPurposeを考える。
個人のPurposeを考える。
そして最後には、社会において人の価値がどのように定義されるのかという問いにつながっていく。
VURAの研究は、このように一つの理論を閉じたものとして扱うのではなく、問いを次の問いへつなげていきます。
9.そして、資本そのものを問い直す
もう一つ重要なのが、Capitalです。
企業が未来価値を創造するには、資本が必要です。
では、資本市場は何に対して資本を配分すべきなのでしょうか。
現在の利益でしょうか。
成長率でしょうか。
ROEでしょうか。
フリーキャッシュフローでしょうか。
もちろん、それらは重要です。
しかしFuture Value Theoryの立場から考えると、もう一つ見るべきものがあります。
その企業には、自らを再定義し、新しい未来を生み出す能力があるのか。
これを「Redefinition Capacity」として捉え、それを資本配分の対象として考える。
そこから、
Redefinition Capitalism
という問いが生まれました。
企業の再定義から始まった議論が、人、組織、社会、そして資本主義のあり方まで広がっていく。
これは最初から巨大な理論体系を設計していたからではありません。
一つの問いを深く考え、実践と照らし合わせ、先行研究と比較し、別の角度から問い直す。
その結果として、次の問いが生まれてきたのです。
10.「論文を増やすこと」が目的ではない
だから、VURA Working Paper Seriesの目的は、論文の本数を増やすことではありません。
7本を10本にすることでも、10本を100本にすることでもありません。
重要なのは、
理論を多面的に鍛えること
です。
Future Value Theoryという企業価値の問い。
Enterprise Redefinitionという企業経営の問い。
Purpose Descriptionという人と組織の問い。
Brain Capitalという能力の問い。
Self-Defined Societyという社会の問い。
Redefinition Capitalismという資本配分の問い。
これらを個別の理論として終わらせるのではなく、相互に接続していく。
企業価値だけを考えても、企業経営は説明できません。
企業経営だけを考えても、人の問題は解けません。
人だけを考えても、社会制度や資本市場を無視することはできません。
AI時代の変化は、それほど大きなものだと考えています。
11.理論を「知」へ
しかし、Working Paperを書くだけでも十分ではありません。
論文は、一つひとつの問いを深く研究するためには非常に有効です。
一方で、経営の現場では、
「では、経営者は何を考えればよいのか」
「組織をどう設計すればよいのか」
「企業価値をどう考えればよいのか」
「AIと人をどう組み合わせればよいのか」
という、より統合された知識が必要になります。
そこで必要になるのが、
Body of Knowledge——知識体系
です。
個別の理論を、経営全体のなかに位置づけ直す。
戦略。
組織。
人。
AI。
企業価値。
資本。
Purpose。
Leadership。
Enterprise Redefinition。
Future Value。
これらをバラバラの概念としてではなく、一つの体系として理解できるようにする。
その試みの一つが、
AI Management Library
です。
12.AI Management Libraryは「本のシリーズ」だけではない
AI Management Libraryを、単なる書籍シリーズとしては考えていません。
私が目指しているのは、
AI時代の経営のBody of Knowledge
です。
AI時代に経営者が考えるべき問いとは何か。
企業とは何か。
人とは何か。
未来価値とは何か。
企業再定義とは何か。
組織をどうつくるのか。
企業価値をどう測るのか。
資本をどう使うのか。
世界の企業はどのように自らを再定義しているのか。
こうした知を体系として接続していく。
つまり、
Working Paperで縦に深く掘り、Libraryで横につなぐ。
研究によって一つひとつの概念を深め、それを知識体系として統合する。
これが、VURAにおけるResearchとLibraryの関係です。
13.しかし、ここで終わってはいけない
研究を行った。
理論をつくった。
Working Paperとして公開した。
書籍にした。
Body of Knowledgeとして体系化した。
もし、ここで終わるのであれば、VURAがそれを行う意味は半分しかありません。
なぜなら、私たちの出発点は、
実践
だからです。
私たちが最終的に目指しているのは、理論をつくることそのものではありません。
理論によって、
現実の企業をより良くすること。
企業が新しい未来価値を生み出せるようにすること。
人とAIが、それぞれの強みを生かしながら働ける組織をつくること。
企業が自らを再定義し続けられるようにすること。
資本を、未来を生み出す場所へ向かわせること。
そのために、知をもう一度、実践へ戻します。
14.知を、投資と経営へ戻す
VURA Capital Innovation Holdingsの中核事業は、企業への投資、経営参画、そしてEnterprise Redefinitionの実践です。
だからこそ、研究によって得られた知識は、最終的には企業経営の現場へ戻っていかなければなりません。
企業を見るとき。
投資判断をするとき。
経営に参画するとき。
Purposeを再定義するとき。
事業ポートフォリオを変えるとき。
組織を設計するとき。
AIを導入するとき。
人材の役割を考えるとき。
資本を配分するとき。
経営者を選ぶとき。
そこに、研究から得た知を使う。
そして、実践してみる。
理論通りにいくこともあるでしょう。
いかないこともあるでしょう。
むしろ、現実は理論より複雑です。
そのズレこそが重要です。
15.実践が、再び理論を変える
実践してみると、新しい問いが生まれます。
「この条件では理論が成立しない」
「この変数が抜けていた」
「この企業では違う現象が起きた」
「人の行動は想定と違った」
「資本市場は別の評価をした」
そうした現実から得られた発見を、もう一度研究へ戻す。
Working Paperを更新する。
新しい研究テーマをつくる。
理論を修正する。
そして、知識体系も更新する。
その知を、再び実践へ戻す。
つまり、VURAが目指しているものは、一方向の流れではありません。
実践 → 理論 → 知 → 実践
という循環です。
しかも、一度回って終わりではありません。
何度も回り続けます。
実践から理論が生まれる。理論から知が生まれる。知が新しい実践を生む。新しい実践が、また理論を書き換える。
この循環そのものが、VURAの知的生産モデルです。
16.AI時代だからこそ、この循環が重要になる
AIによって、知識へのアクセスは劇的に変わりました。
調査できる。
分析できる。
文章を書ける。
コードを書ける。
資料をつくれる。
過去の研究を探せる。
大量の情報を短時間で整理できる。
「知っていること」そのものの希少性は、これからさらに低下していくでしょう。
だからこそ、人間や企業にとって重要になるのは、
何を問うのか。何を信じるのか。どの未来をつくるのか。そして、それを現実の世界で実践できるのか。
ということだと考えています。
AIは、理論形成を支援できます。
AIは、既存研究を整理できます。
AIは、仮説を検討できます。
AIは、知識体系を構造化できます。
しかし、
どの未来をつくりたいのか
という意思そのものは、人間と企業の側に残ります。
だからVURAでは、Researchを実践から切り離しません。
17.「研究する会社」ではなく、「学習し続ける会社」へ
VURAが目指しているのは、研究部門を持つ会社というだけではありません。
もっと重要なのは、
会社そのものが学習する仕組みを持つこと
です。
実践する。
考える。
言語化する。
既存の知と比較する。
理論化する。
公開する。
批判を受ける。
修正する。
体系化する。
もう一度実践する。
このサイクルを会社の中に組み込む。
そうすれば、企業は過去の成功モデルだけに依存しなくなります。
常に現実から学び、自分たちの理論そのものを書き換えていくことができます。
それは、Enterprise Redefinitionそのものでもあります。
企業再定義とは、事業を一度変えることではありません。
自らを再定義し続ける能力を持つこと
です。
その意味では、VURA Working Paper Seriesそのものが、VURA自身の学習と再定義の仕組みでもあるのです。
18.完成された答えではなく、「更新され続ける知」をつくる
VURA Working Paper Seriesで公開している理論は、完成された答えではありません。
むしろ、そうであってはいけないと思っています。
AIも変わります。
企業も変わります。
人の働き方も変わります。
資本市場も変わります。
社会も変わります。
そのなかで、経営理論だけが固定されたままでよいはずはありません。
Working Paperという形式を選んだ理由の一つも、ここにあります。
Version 1がある。
その先にVersion 2があるかもしれない。
新しいデータによって仮説が否定されるかもしれない。
新しい企業事例によって理論が拡張されるかもしれない。
実践によって、新しい概念が必要になるかもしれない。
それでいい。
むしろ、それこそが重要です。
知は、完成品ではなく、更新され続けるものだからです。
19.VURA Working Paper Seriesが目指すもの
VURA Working Paper Seriesは、2026年に始まりました。
Future Value Theory。
Enterprise Redefinition。
Enterprise Redefinition Observed。
Purpose Description。
Brain Capital Management。
Self-Defined Society。
Redefinition Capitalism。
テーマは企業価値から始まり、企業、人、組織、社会、資本へと広がっています。
しかし、これらは別々の研究ではありません。
その中心には、一つの問いがあります。
AI時代に、人と企業はどのように未来価値を創造するのか。
この問いを、企業経営から見る。
人から見る。
組織から見る。
資本から見る。
社会から見る。
そして実践から見る。
さまざまな角度から問い続けることで、少しずつ一つの体系が見えてくるのではないかと考えています。
20.実践を理論へ。理論を知へ。知を実践へ。
VURA Working Paper Seriesをつくった理由を、一言で表すなら、この言葉になります。
実践を理論へ。理論を知へ。知を実践へ。
私自身がこれまで経験してきた経営や企業変革の実践。
そこから生まれた問いを、書籍として言語化する。
それをWorking Paperとして世界の先行研究と照らし合わせる。
本当に新しい考えなのかを問い直す。
事例、組織、人、AI、社会、資本など、さまざまな観点から理論を磨く。
その理論を、AI Management LibraryのようなBody of Knowledgeとして体系化する。
そして、その知識体系を、もう一度企業への投資と経営参画の現場へ戻していく。
そこで生まれた新しい経験を、再び理論へ戻す。
これは直線ではありません。
循環です。
そして私は、この循環を何度も、何度も回していきたいと思っています。
21.理論を、実践の現場へ戻す
新しい経営理論を提唱するのであれば、それを理論のまま終わらせてはいけない。
そう考えています。
Future Value Theoryも、Enterprise Redefinitionも、Brain Capital Managementも、Purpose Descriptionも、Redefinition Capitalismも、最終的に重要なのは、現実の企業や経営のなかでどのように機能するのかです。
VURAの理論の多くは、もともと私自身がこれまで関わってきた企業経営、企業変革、事業創出、組織づくり、投資や経営参画といった実践のなかから生まれてきました。
そして、その実践から生まれた問いを言語化し、書籍にし、Working Paperとして先行研究と照らし合わせ、理論として磨いてきました。
しかし、そこで終わるわけではありません。
磨かれた理論は、もう一度、現実の世界へ戻していきます。
VURA自身の経営で試すこともあるでしょう。
投資判断に活用することもあるでしょう。
経営参画先の企業で実践することもあるでしょう。
パートナー企業や、さまざまな企業との取り組みのなかで検証されることもあるでしょう。
重要なのは、
誰が最初に実践するかではなく、理論が現実のなかで繰り返し試されること
です。
たとえばFuture Value Theoryであれば、企業が本当に未来価値を生み出す能力をどのように見極められるのか。
Enterprise Redefinitionであれば、実際の企業がPurpose、Business、Organization、Capital、Leadershipをどのように再定義できるのか。
Brain Capital Managementであれば、人とAIの力を組み合わせながら、企業としての思考力や判断力をどのように蓄積できるのか。
Purpose Descriptionであれば、「何をするか」ではなく「何のために価値を生み出すのか」を起点に、人の役割をどこまで再設計できるのか。
Redefinition Capitalismであれば、企業のRedefinition Capacityを実際の投資や資本配分の判断にどう反映できるのか。
こうした問いは、論文の中だけでは答えが出ません。
実際の企業、実際の経営、実際の人、実際の資本の動きの中で試してみる必要があります。
そして実践してみれば、必ず理論とのズレが生まれます。
想定していなかった条件が見つかるかもしれない。
新しい変数が必要になるかもしれない。
理論が成立しないケースが見つかるかもしれない。
そのズレこそが、次の研究の起点になります。
だから私たちは、理論を「完成品」として企業に当てはめようとは考えていません。
理論を実践へ戻し、実践によって理論をもう一度鍛える。
そこから得られた知見を、再びWorking Paperや知識体系へ戻していく。
そして、更新された知を、また次の実践へ戻していく。
VURAが目指しているのは、この循環です。
22.VURAだけの知にしない
この循環は、VURAの中だけで閉じるものではありません。
むしろ、閉じてしまえば、その価値は限定されます。
研究者。
経営者。
実務家。
投資家。
学生。
企業。
さまざまな人が理論を読み、批判し、検証し、実践する。
そして、異なる業界、異なる企業、異なる社会のなかで、別の結果が生まれる。
その結果が、また理論を豊かにしていく。
知識は、所有するものではなく、
接続されることで進化していくもの
だと考えています。
VURA Working Paper Seriesは、そのための接点でもあります。
VURAが理論をつくって終わるのではない。
外の世界へ公開し、別の実践へとつながり、そこから新しい知見が生まれる。
その意味では、VURAが目指しているのは、単なる研究組織ではありません。
実践と理論と知を接続する場
をつくることです。
23.知を閉じない
VURA Working Paper Seriesで大切にしていることの一つが、
Open Accessであること
です。
私たちが考えた理論を、VURAの内部だけに閉じ込めない。
研究者にも読んでもらいたい。
経営者にも読んでもらいたい。
学生にも読んでもらいたい。
投資家にも読んでもらいたい。
そして、批判してもらいたい。
別の企業で試してもらいたい。
違うデータで検証してもらいたい。
新しい研究につなげてもらいたい。
知は、閉じることで強くなるのではなく、
外の世界と接続されることで強くなる
と考えているからです。
一つの理論が、本当に意味のあるものになるのは、それが提唱者の手を離れたときかもしれません。
別の人が使う。
別の人が疑う。
別の人が修正する。
別の人が発展させる。
そこから、知識は初めて社会のものになっていく。
Working Paperという形式には、そのための意味もあります。
24.未来の経営を、実践と研究の間からつくる
私は、経営の未来は、研究だけから生まれるものでも、実践だけから生まれるものでもないと考えています。
実践だけでは、経験が個人の暗黙知で終わってしまうことがあります。
理論だけでは、現実から離れてしまうことがあります。
知識体系だけでは、時代の変化によって陳腐化していきます。
だからこそ、この三つを回し続ける。
Practice.Theory.Knowledge.And back to Practice.
実践を理論へ。
理論を知へ。
知を実践へ。
その実践から、また新しい理論へ。
VURA Working Paper Seriesは、その循環をつくるために生まれました。
25.VURAにとって、研究は事業と別の活動ではない
企業には通常、「事業」と「研究」があります。
事業部門があり、研究部門がある。
実務と研究が分かれている。
しかし、VURAでは、できるだけこの二つを分断したくないと考えています。
なぜなら、研究は事業の外側にあるものではないからです。
投資をするから、企業を見る。
企業を見るから、問いが生まれる。
経営に関わるから、理論の限界が見える。
理論の限界が見えるから、研究する。
研究するから、新しい視点が生まれる。
新しい視点が、次の投資や経営に戻っていく。
この循環そのものが、事業です。
その意味で、Working Paperは広報物でも、付随的な研究成果でもありません。
VURAがどのように考え、どのように学び、どのように企業価値を生み出そうとしているのかを示すもの
でもあります。
26.書籍、Working Paper、Body of Knowledgeは役割が違う
VURAでは、書籍とWorking PaperとBody of Knowledgeを、同じものとは考えていません。
それぞれに役割があります。
書籍は、実践から生まれた考えを広く言語化する。
Working Paperは、その考えを既存研究と照らし合わせ、理論として鍛える。
Body of Knowledgeは、個別の理論を一つの体系として接続する。
そして実践は、その体系を現実の世界で試す。
つまり、
書籍は言語化。Working Paperは理論化。Body of Knowledgeは体系化。実践は検証と更新。
です。
この四つは独立していません。
互いに往復します。
書籍からWorking Paperが生まれることもある。
Working Paperから新しい書籍が生まれることもある。
複数のWorking PaperがBody of Knowledgeに統合されることもある。
実践から新しい理論が生まれ、既存のBody of Knowledgeを書き換えることもある。
この動的な関係を、VURAでは大切にしています。
27.「知識を持つ会社」ではなく、「知識を更新できる会社」へ
AI時代において、企業が大量の知識を持っていること自体は、以前ほど大きな競争優位ではなくなるかもしれません。
AIによって、外部の知識へ瞬時にアクセスできるからです。
だからこそ重要になるのは、
どれだけ知識を持っているかではなく、どれだけ速く、深く、正しく知識を更新できるか
だと考えています。
現実を見る。
問いを立てる。
理論化する。
検証する。
間違いを認める。
書き換える。
再び試す。
この能力こそが、AI時代の企業に必要な学習能力の一つになるのではないでしょうか。
VURA Working Paper Seriesは、外部に向けた発信であると同時に、VURA自身がこの学習能力を持ち続けるための仕組みでもあります。
28.答えではなく、問いを残す
Working Paperを書くと、つい「答え」を出したくなります。
しかし、重要なのは答えだけではありません。
むしろ、良い問いを残すことの方が重要な場合があります。
企業価値とは何か。
人の価値とは何か。
企業は何のために存在するのか。
人は何のために働くのか。
AIと人間は、どう役割を分けるべきなのか。
未来を創造する企業とは何か。
資本は何に配分されるべきなのか。
企業は、どこまで自らを再定義できるのか。
こうした問いに、最終的な答えが一つだけあるとは思っていません。
むしろ、時代が変われば答えも変わります。
だからこそ、問いを持ち続ける。
そして、その時点での最良の答えを理論として提示し、実践によって問い直す。
これも、Working Paperという形式を選んだ理由の一つです。
29.未来価値を生み出す企業を増やすために
VURAのMissionは、未来価値を生み続ける企業を増やすことです。
そのために必要なのは、資本だけではありません。
経営だけでもありません。
テクノロジーだけでもありません。
知も必要です。
企業が自らを理解するための知。
未来を構想するための知。
自らを再定義するための知。
人とAIの関係を考えるための知。
資本をどこへ向けるのかを判断するための知。
そうした知を、実践から生み出し、理論として磨き、体系として共有し、もう一度実践へ戻していく。
これが、VURA Working Paper Seriesの役割です。
30.一つの循環を、長く回し続ける
私たちは、Working Paperを一度発表して終わりにしたいとは考えていません。
一冊の本を書いて終わりでもありません。
一つの理論を完成させて終わりでもありません。
実践する。
理論化する。
知識体系にする。
再び実践する。
そして、また考える。
この循環を、長く回し続けていく。
数年ではなく、10年、20年、その先まで回していく。
そのなかで、いまの理論の一部は否定されるかもしれません。
別の概念に置き換わるかもしれません。
現在は見えていない新しい理論が生まれるかもしれません。
それでいいと思っています。
なぜなら、守るべきものは「今の理論」ではなく、
未来価値を生み出すために、学び続ける姿勢
だからです。
31.実践を理論へ、理論を知へ、知を実践へ
VURA Working Paper Seriesをつくった理由。
それは、研究実績を増やすためではありません。
本を書くためでもありません。
理論を権威づけるためでもありません。
私自身がこれまで経験してきた実践を、そのまま個人の経験として終わらせず、言葉にする。
言葉にしたものを、世界の先行研究と照らし合わせる。
何が新しく、何が新しくないのかを確認する。
理論として足りない部分を補う。
別の観点から検証する。
複数の理論をつなぎ、Body of Knowledgeへと発展させる。
そして、その知を、もう一度現実の企業と経営へ戻していく。
そこで起きたことから学び、再び理論を書き換える。
この循環をつくるためです。
実践を理論へ。理論を知へ。知を実践へ。
これは、一方向ではありません。
Practice → Theory → Knowledge → Practice → Theory → Knowledge……
と続いていく循環です。
書籍は、その途中にあります。
Working Paperも、その途中にあります。
AI Management Libraryも、その途中にあります。
投資も、経営参画も、その途中にあります。
どれか一つが目的なのではありません。
すべては、
より良い未来価値を生み出すための循環
の一部です。
そして、この循環はVURAだけで完結するものでもありません。
企業、経営者、研究者、実務家、投資家、学生。
さまざまな人が問い、試し、批判し、更新していくことで、知はより強くなっていきます。
VURA Working Paper Seriesが、その一つの接点になればと思っています。
完成した答えを提示する場所ではなく、
未来の経営を、ともに考えるための場所。
実践から問いを生み、
理論へ変え、
知として体系化し、
もう一度、現実の世界へ戻していく場所。
それが、VURA Working Paper Seriesです。
実践を理論へ。理論を知へ。知を実践へ。
この循環から、AI時代の新しい経営をつくっていきます。
VURA Capital Innovation Holdings Inc.Naoki KadowakiFounder, President & CEO
VURA Working Paper SeriesISSN 2761-011X


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