AI時代、私たちは何のために働くのか。― VURA創業とEnterprise Redefinitionの原点
- Naoki Kadowaki

- 8月12日
- 読了時間: 9分
AIは、私たちの仕事を急速に変えています。
これまで多くの時間と経験を必要としていた情報収集、分析、資料作成、プログラミング、アイデアの整理。こうした仕事の多くを、AIが驚くほどの速度で支援できるようになりました。
そして、この変化はまだ始まったばかりです。
AIがさらに進化すれば、「人間にしかできない」と考えられてきた仕事の領域にも、その能力は広がっていくでしょう。
では、その先に何があるのでしょうか。
AIが多くの仕事を担えるようになったとき、私たちは何のために働くのでしょうか。
企業は、何のために存在するのでしょうか。
そして経営者は、何を決める存在になるのでしょうか。
この問いは、VURA Capital Innovation Holdingsを創業した背景にある、最も根本的な問いの一つです。
今回公開した「Featured Conversation」では、VURAを創業した背景から、AI時代における企業と人のあり方、そして人とAIがともに未来をつくる経営についてお話ししました。
AIが変えるのは「仕事」だけではない
AIについて語るとき、多くの場合、議論の出発点は「効率化」です。
この仕事をAIで何時間短縮できるか。
何人分の業務を自動化できるか。
どれだけコストを削減できるか。
もちろん、これらは重要です。
企業経営において、生産性の向上は必要です。AIによって業務を効率化し、人がより重要な仕事に時間を使えるようにすることには、大きな価値があります。
しかし、私はAIがもたらす本質的な変化は、その先にあると考えています。
AIが知識・分析・実行を民主化していけば、「知っていること」「分析できること」「速く処理できること」だけでは、企業にとっても人にとっても、差別化することが難しくなっていきます。
これまで企業が競争力の源泉としてきたものの一部が、AIによってコモディティ化していくからです。
だからこそ、競争の軸そのものが変わります。
効率化から、価値定義へ。
「どれだけ効率よくできるか」だけではなく、
「そもそも何をするのか」
「なぜそれをするのか」
「誰のために、どのような未来をつくるのか」
という問いの重要性が高まっていきます。
AIが答えをつくる能力を高めるほど、人間には「何を問うのか」「何を目指すのか」「何を価値と定義するのか」が求められるようになる。
私はそう考えています。
企業は、何のために存在するのか
これは経営にとって非常に大きな変化です。
これまでの経営では、既に存在する市場や事業を前提として、その中でいかに効率を高め、競争優位を築き、利益を最大化するかが重視されてきました。
しかし、環境が大きく変化する時代には、既存の前提そのものを問い直さなければなりません。
自分たちは、本当は何のために存在しているのか。
顧客に提供している本当の価値は何なのか。
現在の事業は、その価値を実現するための最善の方法なのか。
組織は、その未来を実現するための形になっているのか。
資本は、過去の延長ではなく未来に向けて配分されているのか。
こうした問いを改めて考える必要があります。
企業を変えるということは、単に新しいシステムを導入することでも、AIを導入することでも、組織図を書き換えることでもありません。
企業そのものを、未来から考え直すことです。
ここから、VURAが掲げるEnterprise Redefinition(企業再定義)という考え方が生まれました。
Enterprise Redefinitionとは何か
Enterprise Redefinitionとは、変化に合わせて企業を部分的に修正することではありません。
企業の存在意義から、事業、組織、資本、経営のあり方までを、未来に向けて再定義していくことです。
VURAでは、企業の再定義を、主に5つの要素から考えています。
Purpose、Value、Organization、Capital、Governance。
企業は何のために存在するのか。
誰に、どのような価値を提供するのか。
その価値を生み出すために、どのような組織であるべきなのか。
どこに資本を投じるのか。
そして、その企業をどのように導いていくのか。
これらは独立した問題ではありません。
Purposeだけを変えても、事業が変わらなければ企業は変わりません。
事業だけを変えても、組織や資本配分が過去のままであれば、変革は続きません。
AIだけを導入しても、何のために使うのかが定義されていなければ、効率化以上の価値にはつながりにくい。
だからこそ、企業全体を一つの構造として捉え、再定義していく必要があります。
VURAが「投資し、経営に入り、再定義する。」と掲げている理由もここにあります。
外から提言するだけではなく、資本を投じ、経営に参画し、実行まで担う。
構想だけでは終わらせない。
それがVURAの目指している企業変革です。
AI時代、人間の価値は小さくなるのか
AIが進化すると、「人間の価値は小さくなるのではないか」という議論があります。
私は、必ずしもそうではないと考えています。
むしろ、AIによって人間の価値の定義が変わるのではないでしょうか。
知識を大量に記憶していること。
決められたプロセスを正確に実行すること。
情報を整理すること。
こうした能力の希少性は、AIによって低下していく可能性があります。
一方で、
問いを立てること。
意味を考えること。
未来を構想すること。
他者に共感すること。
異なるものをつなぐこと。
何を大切にするかを選択すること。
そして、自らの意思で未来に向かうこと。
こうした人間の能力は、むしろ重要になります。
だから、AIと人間を対立させる必要はありません。
AIか、人間か。
ではなく、
AIと人間で、何をつくるのか。
こちらの方が重要です。
AIによって人間を置き換えるのではなく、AIによって人間の可能性を拡張する。
そして、人間はより人間にしか担えない領域へ向かっていく。
そのような未来をつくることができると考えています。
経営者の仕事も変わる
同じことは、経営者にも起こります。
これまで経営者は、多くの情報を集め、分析し、個別の意思決定を行ってきました。
しかしAIエージェントが自律的に分析し、判断し、実行する範囲が広がっていけば、経営者がすべての業務ループの中に入り続ける必要はなくなっていきます。
そこで重要になるのが、VURAが提唱しているHuman-on-the-Loop経営です。
経営者が一つひとつのループの「中」に入るのではなく、ループの「上」から全体を設計し、方向づけ、監督する。
何のためにAIを動かすのか。
どのような価値を目指すのか。
どこまでAIに任せ、どこを人間が担うのか。
資本をどこに配分するのか。
最終的に、どの未来を選択するのか。
経営者の役割は、個々の答えを出すことから、企業全体が向かう方向を定義することへと変化していくと考えています。
AIが賢くなるほど、経営者の役割がなくなるのではありません。
経営者に求められるものが、変わるのです。
なぜVURAを創ったのか
私はこれまで、テクノロジー、経営、企業変革、そして投資・資本に関わってきました。
その中で感じてきたことがあります。
企業には、本来もっと大きな可能性があるということです。
優れた人がいる。
技術がある。
顧客がいる。
ブランドがある。
資本がある。
それでも、それらが分断されていることで、本来生み出せるはずの価値を生み出せていない企業は少なくありません。
だから、VURAでは、ビジネス、テクノロジー、資本を再接続します。
投資する。
経営に入る。
そして、企業そのものを再定義する。
目指しているのは、単なる企業価値の改善ではありません。
未来価値を生み続ける企業を増やすこと。
企業が自らの存在意義を問い直し、未来に必要とされる価値を定義し、それを事業として実装する。
その企業が成長することで、働く人、顧客、取引先、地域、社会にも新しい価値が生まれる。
企業の未来価値創造と、社会の未来をつなげていきたいと考えています。
未来価値をどう捉えるか
未来価値は、現在の財務諸表だけでは完全には捉えられません。
まだ存在していない市場。
これから生まれる技術。
将来解決される社会課題。
人々の価値観の変化。
そこに企業がどのように関わり、新しい価値を生み出していけるのか。
それを考える必要があります。
VURAでは、その未来価値創造の動きを捉える試みとして、**VURA Future Index(VFI)**を公開しています。
私たちが未来価値を考える際に見ているのは、単に企業の時価総額の増減ではありません。
「長生き」「地球の安全」「快適な生活」「未知への冒険」。
人類や社会の未来につながる領域を捉え、その変化を継続的に観測しています。
いわば、未来価値創造の体温計です。
未来を完全に予測することはできません。
しかし、未来に向けてどこに資本が動き、どのような価値が生まれようとしているのかを観測することはできます。
そして、その変化を見ながら、自らも未来をつくる側に立つ。
それがVURAの考え方です。
理論を、実践へ
VURAでは、Enterprise Redefinitionだけでなく、Future Value Theoryをはじめとした理論研究、Working Paperの公開、そしてAI時代の経営知を体系化した「AI Management Library」の構築を進めています。
しかし、研究や書籍をつくること自体が目的ではありません。
理論を知へ。知を実践へ。
研究によって新しい経営の考え方をつくる。
それを体系化し、社会に共有する。
そして、投資・経営参画を通じて企業の現場で実践する。
実践から得られた知見を、再び研究へ戻す。
この循環をつくることが重要だと考えています。
AI時代の経営には、まだ答えがありません。
だからこそ、自分たち自身が問いを立て、理論をつくり、実践し、検証し続ける必要があります。
AI時代、私たちは何のために働くのか
最初の問いに戻ります。
AI時代、私たちは何のために働くのでしょうか。
一つの決まった答えがあるとは思いません。
そして、おそらく、そのこと自体が重要なのだと思います。
AIが多くの「答え」をつくれる時代だからこそ、人間には、自分たちが何を大切にし、どの未来を選ぶのかを考える自由があります。
企業も同じです。
過去から与えられた定義の中で競争し続けるだけではなく、自らの存在意義を問い、自ら価値を定義し、自ら未来をつくることができる。
そのために必要なのが、再定義です。
真の価値は、最適化からは生まれない。再定義から生まれる。
VURA Capital Innovation Holdingsは、投資し、経営に入り、企業を再定義することで、未来価値を生み続ける企業を増やしていきます。
そして、人とAIがともに、それぞれの可能性を拡張しながら未来をつくる。
その先に、より豊かな社会があると考えています。
Redefining Enterprise Value. Creating the Future.
Featured Conversation
「AI時代、私たちは何のために働くのか。」
VURA創業の背景から、AI時代の企業と人のあり方、人とAIがともにつくる未来、そしてこれからの経営についてお話ししています。
YouTube|金沢シーサイドFM「社長!あなたの会社教えてください」



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